島根大学産学連携センター
Collaboration Center,Shimane University

生物資源科学部 佐藤利夫教授が「共同研究・技術移転功労賞」を受賞

 平成20年7月17日(木),18(金),海峡メッセ下関に於いて,中国地域産学官コラボレーション会議と,中国地域産業クラスターフォーラムの主催で,「地域イノベーション創出2008inやまぐち〜産学官連携・産業クラスター推進シンポジウム〜」が,開催されました。

 18日には産学官功労者表彰が行われ,生物資源科学部・産学連携センター地域産業共同研究部門長 佐藤利夫教授が,「共同研究・技術移転功労賞」を受賞しました。

 この表彰は,産学連携活動において大きな成果を収め,また,先導的な取組を行う等,当該活動の推進に多大な貢献をした事例,もしくは将来期待できる事例に関し,その功績を顕彰するものです。

 この受賞についてはこちらもご覧ください。

 なお,平成17年には産学連携センター 北村寿宏教授が平成18年には医学部附属病院 花田英輔助教授が受賞しています。


事例名
機能性無機材料による排水からのリン除去・再資源化技術の開発


 機関及び連携機関  功労者

島根大学

島根大学生物資源科学部教授 佐藤利夫 

株式会社イズコン

株式会社イズコン常務取締役 江角典広 氏

クリオン株式会社

株式会社イズコン環境技術課 阿部公平 氏

帝人エンジニアリング株式会社    

(財)しまね産業振興財団    

 事例の概要

島根大学生物資源科学部の研究成果を基にして,2002年に,文部科学省・都市エリア産学官連携促進事業の支援を受け「高機能水処理用無機材料の開発」を開始。

リン除去装置

リン回収装置
(担持成形体の再生装置も兼ねる)

上記事業により,リン酸イオン高選択性無機吸着材および有害イオン選択除去性能等を有する無機吸着材を開発。

2件の公的研究開発事業の支援および民間との共同研究により,高度水処理用に特化して実用化を目的とした機能性無機材料担時成形体を開発。

上記事業で開発した機能性無機材料担時繊維成形体(リン除去・回収用)を基盤技術として,2006−2007年度の経済産業省・地域新生コンソ−シアム研究開発事業により「中・小規模 排水処理施設用高性能リン除去・回収装置」を開発。

2009年度に上記事業の中心企業である(株)イズコンから「リン除去・回収・再資源化システム」として販売予定。
(右写真 上:リン除去装置  下:リン回収装置)

今後,水環境を中心とした環境浄化・資源回収・循環利用の分野において,機能性無機材料を用いたリン除去・回収・再資源化技術は,国内外で広く利用され普及することが期待できる。

   
(特筆すべき事項)

機能性無機材料担時成形体を利用したリン除去・回収・再資源化システムは,イオン交換技術を基盤としているため,@従来技術のように多量な汚泥・スラッジを発生せずに高度処理が可能,A省エネ・コンパク化が可能で維持管理が容易, B0.5mg/L以下まで高度にリン除去が可能,Cリンをイオン態として吸着するため,リンの回収・再現化が容易,D担時成形体の繰り返し再生使用も可能,Eリン回収・担時成形体の再生に使用した薬液類も繰り返し再使用可能であり,本システムはゼロエミッション型である。

機能性無機材料を利用する本技術は,有害のイオン除去やレアメタル等の資源回収技術としても応用可能であり,汚染地下水の浄化や廃棄物処理場侵出水の浄化等の水環境浄化技術,また種々の資源が少ない我が国において,基盤的な資源回収技術となり得る技術であり,資源循環型社会の構築に資する技術である。

無機材料を高機能化することは構造が単純ため難しいとされてきたが,構成元素の種類と組成比および合成方法のマッチングを行い,高機能な無機材料を創出する技術は,「組成変換技術」として既に関係学会に認知されており,当該技術により開発した種々の機能性材料を環境浄化に応用した研究が評価され,「無機マテリアル学会学術賞(2004年度)」の受賞に至っており,本技術は学術的貢献性および環境技術としての実用性も高い技術である。


 具体的成果等
1.技術面での成果
◎技術の特長

排水高度処理システムへの本技術の導入により,汚泥・スラッジの発生がなくなり,その処理・処分費用も不必要

従来の高度処理技術が導入困難な中・小規模排水処理施設にも本技術は導入でき高度処理が可能

リン資源が皆無の我が国において、本技術の導入によりリン資源の循環利用システムの構築が可能
◎特許:

汚水処理水の脱色方法及び脱色用部材の再生方法。 特願:2008-048884

吸着槽ならびに排水処理方法,排水処理用リン吸着剤の再生方法,排水処理用リン吸着剤の再生処理液再生利用方法(3件 出願手続き中を含む)
◎査読付論文等

Kuwabara, T. Kimura, H. Sunayama, S. Kawamoto, A. Oshima, H. Sato, T. : Removal Characteristics of Phosphate and Nitrate Ions with an Mg- Fe-Al-Cl Form Hydrotalcite. Journal of the Society of Inorganic Materials, Japan, Vol.14 : 17-25(2007年1月)

大島久満・桑原智之・佐藤利夫・川本有洋・森真一朗:ハイドロタルサイト担持繊維(HTCF)の実排水からのリン除去性能.水環境学会誌,Vol.30,:671-676(2007年 11月)

大島久満・桑原智之・佐藤利夫・川本有洋・森真一朗:ハイドロタルサイト担持繊維(HTCF)のリン吸着能力・再生特性.水環境学会誌,Vol.30,:463-468(2007年 8月)
 
.これまでの受賞

2004年度「無機マテリアル学会学術賞受賞」

松江テクノフォーラム若手技術者顕彰
 

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