製鉄工程と結びつけた廃木材の炭化と生成物の利用



ここでは,研究の内容を詳しく紹介します.
最終更新日:平成13年6月1日



【研究の目的と背景】
 本研究では,製鉄における排ガス浄化の強化技術に着目した.排ガス浄化の強化は,ダイオキシン対策など新たに生じた課題の解決のためには不可欠な技術である.本研究では,排ガスの浄化という鉄鋼業に課せられた新たな課題に対し,社会の中での問題点の一つである廃木材の処理を組み合わせることにより,複合問題として2つの課題を同時に解決することを目指している.さらに,新しい排ガス浄化システム(下図)が実用化されれば,鉄鋼業に受け入れ可能な排出物の範囲が拡大でき,鉄鋼業を中心とした新産業システム構築に大きく寄与できる.



【製鉄プロセスの問題点と社会の問題点】

(1)製鉄プロセスの問題点
 鉄鋼業での課題として,スクラップの有効利用を促進する必要がある.スクラップには,プラスチック,塗料,油などの有機物が混入しており,溶解工程でダイオキシンなどの有害物が発生する恐れがある.さらに,近年の鉄鋼材料は,高機能化の観点から表面処理を施した鋼材が多く生産され,これに起因して発生するスクラップ中に表面処理剤としてのZn, Sn, Pbなどの重金属が含まれる.これらの重金属の一部は,スクラップの溶解時に炉内から蒸発し排ガス中に含まれ,途中の冷却によりダストとなる.このダストは,重金属を含むことから廃棄処理ではなく,排ガスから回収し再利用が望まれている.従って,これらの有害物を排ガスから除去し環境に拡散させないことが強く望まれ,大きな技術課題である.
(2)社会で困っている問題
 1991年の統計によると,我が国での廃木材の発生は年間約3600万m3であり,90%以上が再利用されずに,焼却ないしは埋め立てにより処分されている.発生原因の多くは,家屋の解体や建設時に発生するもので,全体の約74%を占めている.この中で,特に家屋の解体に伴う廃木材は,防腐処理としてCCA(Cr-Cu-As)処理などがなされている.焼却や埋め立てなどにより廃棄処分が行われると,焼却排ガス中にAsが混入する,焼却灰に高濃度のCrやCuが含まれる,埋め立て地からAs, Cr, Cuが流出するなど,環境問題を引き起こす恐れがある.さらに,住宅の寿命を考慮すると防腐処理された廃木材が今後増加してくることは容易に予想でき,早急な対策が必要である.
◎解決の方法
 排ガスからの有害物の除去には,活性炭などの吸着性能の高い物質をバグフィルターなどと併用して利用することが有力であるといわれている.しかし,活性炭の使用はコスト高になるという問題がある.一方,木材から製造できる木炭が多孔質であるという性質を利用し,吸着剤,調湿材,脱臭剤,水質改善浄化剤などへの利用が試みられている .
 このような背景から,排ガス処理や重金属処理の行き届いた製鉄プロセスに着目し,図に示すような,廃木材からの排ガス吸着用の木炭の製造,製鉄炉排ガスの吸着,吸着後の木炭の製鉄炉での利用,重金属の分離・安定化処理の行えるシステムを提案している.すなわち,廃木材から安価で吸着性能の高い木炭を作り出し,製鉄工程での排ガス中有害物の吸着剤としての利用が促進できれば,廃木材の有効利用が促進でき廃木材の処理と鉄鋼製造との全体としての環境負荷を低減することが期待できる.

【現在の研究内容】
 活性炭の高コストである主な理由は,活性炭に適した原料を選択していること,製造プロセスが炭化と賦活処理の2段であること等が挙げられる.従って,吸着用木炭を安価に製造するためには,廃木材など様々な安価な原料を利用し,かつ,炭化と賦活とを同時に1段で行うことが必要であると考えられる.さらに,製造された木炭が目的とする排ガス浄化システムに適した性能を有する必要がある.本研究では,この可能性を明確にするため,下記の項目の検討を行う.
 (1)木材の炭化に及ぼす諸条件の影響の解明と適正条件の把握
 (2)炭化段階における防腐処理された木材中の重金属の挙動
 (3)製造された木炭の吸着性能の評価


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