ショートプレゼンテーション

 日頃,企業の皆様から「大学ではどのような研究が行われているのかよく分からない」,「大学での研究は難しくてなかなか理解できない」などと言われることがあります。そこで平成27年度より,企業の皆さんに,学生が日頃行っている研究を紹介し,参加者間で意見交換ができるように「学生による研究発表会&産学交流会」を開催しています。

 今年度は7月5日(水)に島根大学松江キャンパスで開催しました。

 まず島根大学産学連携センターから,大庭卓也 センター長による挨拶と,北村寿宏 教授が本学における産学連携について紹介しました。

大庭卓也
産学連携センター長

北村寿宏 教授
 

 続いて,島根大学の学生13名と松江高専の学生2名が,日頃行っている研究について3分間のショートプレゼンテーションとポスターセッションを行いました。
 ポスターセッションでは,ポスターの前で研究内容を詳しく紹介しました。それぞれに常に人だかりができており,回を重ねるごとに,より熱心に意見交換がなされたように感じられました。その意見交換は,発表者同士や参加者同士でも行われ,異分野の交流にもなっていました。

 その後,学外からの参加者に,総合理工学部と生物資源科学部のそれぞれのコースに分かれて,研究室(実験室)見学をしていただきました。

ポスターセッション

 
  開催日時
平成29年7月5日(水)13:30〜17:00
  会場
島根大学総合理工学部3号館 2階 多目的ホール
  主催     共催

島根大学 産学連携センター

島根大学地域未来戦略センター

島根大学総合理工学研究科附属産学官教育推進センター

島根大学生物資源科学部地域連携室

松江工業高等専門学校 地域共同テクノセンター

島根県

公益財団法人しまね産業振興財団

  発表者(発表順)

概要集のPDF版

 
 

 河田 智治

指導教員

神崎 映光

所属

 島根大学 総合理工学研究科 情報システム学コース

分野

 情報システム系

発表テーマ

無線センサネットワークにおけるモバイルシンクとクラスタリングを用いたデータ収集に関する研究

概要

 本研究では,移動可能なデータ収集用ノードであるモバイルシンクを導入した無線センサネットワークにおいて,データ収集のためにモバイルシンクが巡回する距離を抑えつつ,全ノードからのデータ収集を長期間実現する手法を提案する。提案手法では,複数のノードをグループ化するクラスタリングを行い,モバイルシンクが各クラスタの代表とのみ通信を行う経路を巡回する。また,クラスタリングの際に,各ノードの残余電力を考慮することで,特定のノードへの負荷集中を防ぐ。

 

 吉田 智紀

指導教員

中田 健也

所属

 島根大学 総合理工学研究科 物質化学コース

分野

 化学系

発表テーマ

実用性の高い化学選択的な-アセチル化反応の開発

概要

 アミド化反応は有機合成化学における最も基本的な反応のひとつである。このうち,-アセチル化反応はアミンの保護基として利用されるだけでなく,アセトアミド自体が重要な官能基である。従来は,アセチル化剤として塩化アセチルあるいは無水酢酸を用いて合成されることが多いが,これらの手法では反応後に大量の廃棄物を副生するなど問題点がある。一方,我々は安価な酢酸エチルを試薬として,副産物がエタノールのみとなる環境調和性に優れた合成法の開発に成功した。

 

 岡田 和樹

指導教員

横田 正幸

所属

 島根大学 総合理工学研究科 機械・電気電子工学コース

分野

 光応用・計測系

発表テーマ

低コヒーレンスディジタルホログラフィによる多層塗膜計測

概要

 ディジタルホログラフィ(DH)とは光の干渉と回折を利用して測定対象の三次元情報を記録・再生する技術です。我々は塗料や接着剤を測定対象とし,非接触で定量的な乾燥解析法について研究してきました。その研究成果を企業共同開発により昨年6月に実用化しました。今回はDHを応用した低コヒーレンスDHによる多層塗膜の解析法について紹介します。本手法により,自動車ボディーなどに用いられる数10μmの膜厚で塗り重ねられた塗膜各層の解析を目指しています。

 

 本岡 正幸

指導教員

李 樹庭

所属

 島根大学 総合理工学研究科 機械・電気電子コース

分野

 機械系

発表テーマ

転がり軸受の接触解析理論及び実験に関する研究

概要

 転がり軸受は機械装置には必要不可欠な存在である。装置の振動に直接影響する軸受の支持剛性と軸受の破損推定に必要な接触面圧を求める既存の理論や方法では,軸受の接触局部変形しか考慮できず,内輪,外輪及び転動体の構造全体変形を考慮できないため,軸受の正しい支持剛性と接触面圧が求められないのが現状である。本研究では,軸受の構造寸法や形状の影響を考慮できる軸受の接触解析法を提案し,新たな解析法を確立することを目指す。

 

 山本 諒太郎 , 添田 圭佑

指導教員

山田 容士

所属

 島根大学 総合理工学研究科 物理・材料科学コース

分野

 材料・超伝導系

発表テーマ

KOHを用いたRE系超伝導体の作製と特性の改善

概要

 RE系銅酸化物超伝導体は液体窒素よりも高温で超伝導状態となり,完全導電性や完全反磁性などの現象を示す。この物質を線材応用するには,超伝導層形成に高温環境が必要であるため,製造コストの低減が困難となっている。これに対し,原料にKOHを加えて加熱することで比較的廉価,かつ低温で合成することに成功した。一方で,得られる超伝導体は理想的な組成からずれて特性が下がる課題があるため,原料の組成や合成時の雰囲気を変えることで,組成ずれの抑制を試みている。

 

 鈴木 絢子

指導教員

北川 裕之

所属

 島根大学 総合理工学研究科 物理・材料科学コース

分野

 材料・熱電・焼結系

発表テーマ

新規焼結法を用いた異方性を有する材料の性能向上

概要

 粉末材料を焼き固めることにより試料作製を行う焼結法において,我々は新規焼結法を開発中である。この新規焼結法は従来の焼結法の特長である短時間・低温を維持しつつ結晶構造に異方性を有する材料の配向を促すことができる。本研究で対象とした異方性材料は熱電発電において実用化されているBi-Te系熱電材料である。この材料の熱電性能は結晶方向によって約2倍異なり,従来の焼結法で作製した試料に比べ新規焼結法による試料は,強い結晶配向をもち熱電変換効率が約1.5倍良いものが作製できている。

 

 田中 健三

指導教員

森戸 茂一

所属

 島根大学 総合理工学研究科 物理・材料科学コース

分野

 材料・金属・鉄鋼系

発表テーマ

鉄鋼材料に含まれる組織の定量評価

概要

 社会基盤材料である鉄鋼材料には強度や靱性が求められる。特に強度が必要な場合,高温からの急冷によって得られるラスマルテンサイトと呼ばれる組織を用いる場合が多い。このラスマルテンサイトは微細な階層組織を含み,その組織が変形や破壊の抵抗となるため靱性も高いとされている。しかし微細な階層組織であるため定量的な評価が難しい。本研究では局所結晶方位解析手法を用い組織単位の一つであるブロックについての定量評価を行った。

 

 岸 純夏

指導教員

新野邊 幸市

所属

 松江工業高等専門学校 専攻科 生産・建設システム工学専攻

分野

 材料・金属・鉄鋼系

発表テーマ

積層クラッドを用いた炭素鋼に対するアルミナイド被膜の生成

概要

 安価な炭素鋼に対して,アルミナイドからなる被膜を形成し,耐食性や耐酸化性を付与することが,近年見直されている。そこで本研究では,積層クラッドを利用して,アルミナイド被膜を形成した。即ち,鋼材とアルミニウム板を積層させ,これを加熱処理し,鋼材の表面にアルミナイドを形成させた。S15CからS45Cまでの異なる炭素濃度を持つ機械構造用炭素鋼を用いて,炭素濃度がアルミナイドの形成過程に及ぼす影響を調査した。

 

 多久和 萌美

指導教員

新野邊 幸市

所属

 松江工業高等専門学校 専攻科 生産・建設システム工学専攻

分野

 材料・金属・チタン系

発表テーマ

β+γ型チタンアルミ合金の耐酸化性と表面被覆

概要

 チタンアルミ合金は次世代の軽量耐熱材料として期待されている。これまで,α2-Ti3Alとγ-TiAlから構成されるα2+γ型チタンアルミ合金が開発されてきたが,β-Tiを含んだβ+γ型チタンアルミ合金が近年注目されている。 

 しかしながら,β+γ型チタンアルミ合金の耐酸化性はあまり把握されていない。本研究では,大気中の繰返し酸化試験を行い,特性を評価した。また,チタンアルミ合金の表面にアルミナイド被膜を作製して,表面被覆による耐酸化性の改善を試みた。

 

10

 塚越 亮允 , 山中 佑夏

指導教員

児玉 有紀

所属

 島根大学 生物資源科学研究科 生物生命科学専攻

分野

 生物系

発表テーマ

繊毛虫ミドリゾウリムシと緑藻クロレラの細胞内共生とその応用

概要

 繊毛虫であるミドリゾウリムシはその細胞内に緑藻類であるクロレラを共生させることのできる種である。ミドリゾウリムシからは窒素源・炭素源を,クロレラからは光合成産物である酸素やマルトースの供給を受けており双方に利益のある相利共生の関係にある。

 この2者は共生の中でも,特に二次共生と呼ばれる真核細胞同士の細胞内共生機構の解明に有用なモデル生物とされているが,今回は基礎研究により共生機構が解明できた場合に期待される応用面と,ミドリゾウリムシと共生クロレラが持つ生態や性質から考えられる転用に注目した。

 

11

 池田 英治

指導教員

佐藤 邦明

所属

 島根大学 生物資源科学研究科 環境資源科学専攻

分野

 環境・土壌改良系

発表テーマ

島根県内土壌における土壌改良効果を持つ機能性微生物の探査

概要

 微生物は土壌や植物などに数多く存在し,私たちの生活で有益となる効果を持つものもいる。しかし,微生物種の大部分は未知数であるため,微生物の持つ多様性と機能利用の研究開発は今後発展が期待される。

 今回の研究では地域資源の有効利用(主に農業利用)を目的に,島根県内の土壌や植物体から分離・保存された微生物を土壌に加え,土壌改良材として利用可能な微生物がいるか選別調査した。

 

12

 松浦 有紀

指導教員

増永 二之

所属

 島根大学 生物資源科学研究科 環境資源科学専攻

分野

 環境・汚泥処理系

発表テーマ

木質チップを用いた災害対応・低エネルギー型有機質汚泥処理技術の開発

概要

 下水汚泥をはじめとした各種有機質汚泥の処理方法は,コスト重視で分解率の高い処理技術が多い。東日本大震災で,被災地の多くの排水処理施設が損壊・電源供給停止により,汚泥の処理が出来ない問題が生じた。それ以降,災害によるトラブル時にも強い処理技術が求められてきた。災害に強くかつ安価な処理技術として,木質チップを充填した槽に汚泥を投入・撹拌し分解することで減量化する方法(株式会社アクアプロジェクト開発)がある。

  この技術は,週1〜2度の汚泥ポンプ輸送と表層の撹拌以外にエネルギーを使わない。また付帯設備がほとんど必要ないため,施設面積や初期コストを抑える事ができる。また,処理機構が単純な故,科学的な研究がなされてきておらず技術として改善の余地がある。

 そこで,処理技術の機能向上・運転条件最適化をめざし,汚泥処理に関わる基本的ないくつかの装置(運転)条件と汚泥分解率の変化を調べ,装置と運転条件の改善方法の検討を行っている。

 

13

 吉本 匠美

指導教員

江角 智也

所属

 島根大学 生物資源科学研究科 農林生産科学専攻

分野

 農業生産・果樹系

発表テーマ

カキ‘西条’の雄花を用いた研究

概要

 島根県の特産品としても知られるカキ‘西条’は雌花しか着生しない非雄花着生品種とされていたが,近年,雄花を着生する枝が発見された。雄花から得られた花粉を用いて授粉を行った場合,他品種と同等の結実率が得られ,‘西条’同士の交配による新たな‘西条’の系統開発に利用できることが明らかとなった。さらに,カキにおける雌雄の性決定制御機構が明らかにされつつあるが,‘西条’では雄花着生品種がもつべき雄性判別マーカーが検出されず,独自の雄性発達の仕組みを持っている可能性も考えられ,その解明にも取り組んでいる。

  見学コース
 総合理工学部コース

研究室

教員

研究室概要

有機化学2研究室

分子機能化学研究室

中田 健也

飯田 拡基

核磁気共鳴分析装置,ならびに有機・高分子系研究室の紹介を行いました。

笹井・藤村研究室 笹井 亮
材料科学に関する各種分析装置ならびに研究室の紹介を行いました。
機械設計研究室 李 樹庭
歯車,軸受などの機械要素設計に関する最新研究成果及び性能評価実験装置の紹介を行いました。
 
生物資源科学部コース

氏名

教員

研究室概要

生物環境化学研究室 鈴木 美成

環境評価関連の研究室を行っている研究室ですが,食品等のミネラル分析など県内企業との共同研究も行っています。トリプル四重極ICP-MSを中心とした装置を見学して頂きました。

  お問合せ先
島根大学産学連携センター(担当:北村)
Tel:0852-60-2290 E-mail:crcenter@ipc.shimane-u.ac.jp