島根大学産学連携センター

島根大学・松江高専

学生による研究発表会&産学交流会

2016

 日頃,企業の皆様から「大学ではどのような研究が行われているのかよく分からない」,「大学での研究は難しくてなかなか理解できない」などと言われることがあります。そこで昨年から,企業の皆さんに,本学の若い学生が日頃行っている研究を紹介し,参加者間で意見交換できるように「学生による研究発表会&産学交流会」を開催しています。今回の研究発表には松江高専の学生も参加しました。

 当日は,学外から約30名が参加し,学内からも多数が参加して,活発な意見交換が行われました。学内参加者,発表者や主催関係者も含めると,合計で102名の参加となり,会場が狭く感じるほどでした。

 先ず,本学の学生11名と松江高専の学生2名が,日頃行っている研究について,それぞれ3分間のショートプレゼンテーションを行いました。

 続いて,ポスターセッション形式で研究紹介のポスターの前で研究内容を詳しく説明し,発表者と来場者間の活発な意見交換が見られると共に,発表者間でも意見交換が行われ,異分野の交流も行うことができました。

 ポスターセッションの終了後には,総合理工学部と生物資源科学部のそれぞれ3つの研究室(実験室)の見学をしていただきました。

 今後も,学外の方々に研究を紹介し交流できるように,また,参加者間でも異分野交流ができるように継続して「学生による研究発表会&産学交流会」を行って行く予定です。

   日時      会場
 平成28年7月6日(水)13:30〜17:00      島根大学総合理工学部3号館 2階 多目的ホール
   主催      共催
島根大学産学連携センター
島根大学地域未来戦略センター
島根大学総合理工学研究科附属産学官教育推進センター
島根大学生物資源科学部地域連携室
松江工業高等専門学校地域共同テクノセンター
島根県
公益財団法人しまね産業振興財団
 
 
 
学生発表・紹介研究室

発表概要集のPDF版(印刷用)

 
1  田中 祐貴

指導教員

 平川 正人
所属  島根大学 総合理工学研究科 情報システム学コース
分野  情報システム系
発表テーマ  バーチャルリアリティによる筋力トレーニングの効率化
概要

 バーチャルリアリティ(VR:Virtual Reality)技術を用いることで,筋力トレーニングの効率化を図る研究。仮想的なトレーニングジムやインストラクター等を提供するVR空間を構築し,ユーザのモチベーションやパフォーマンスの向上を目指す。また,正しいフォームを促すため,Kinectにより身体の動きをセンシングする。誤ったフォームのトレーニングが行われた場合は改善を促す工夫をする。

 
2  蛭子本 大悟郎

指導教員

 山本 真義
所属  島根大学 総合理工学研究科 機械・電気電子工学コース
分野  エネルギー系
発表テーマ  電気自動車における電力変換器の小型化・高効率化
概要

 近年,地球温暖化や化石燃料枯渇の影響から電気自動車や燃料電池車が注目を集めている。それらに搭載されているDC-DCコンバータはインダクタやキャパシタなどの受動素子,スイッチやダイオードなどの半導体素子から構成され,それらの体積・重量の大型化や損失などが現在問題とされている。この回路において小型化・高効率化を実現できる回路構造や素材などについて研究を行っている。

 
3  金森 光太郎

指導教員

 横田 正幸
所属  島根大学 総合理工学研究科 機械・電気電子工学コース
分野  光応用系
発表テーマ  ディジタルホログラフィ(DH)の工業計測応用
概要

 ディジタルホログラフィは,物体からのレーザー反射光を参照光と干渉させてホログラムとしてCCDで記録し,これをPCで数値計算することにより反射光の振幅,位相情報を再生する技術です。反射光の位相情報から物体の変位・変形や形状が得られるので,我々はこれを工業計測に応用する研究をしています。例として,塗料やインク,接着剤等の乾燥・硬化解析,パイプ内検査システムの開発があります。これらを高度化することで,食品や化粧品検査への展開が可能です。

 
4  中堀 泰史

指導教員

 森戸 茂一
所属  島根大学 総合理工学研究科 物理・材料科学コース
分野  材料系
発表テーマ  高炭素鋼マルテンサイトに含まれる組織サイズとオーステナイト粒径の相関関係の解明
概要

 鉄鋼材料は作り方によって力学的性質が変化します。例えば,鉄に0.6質量パーセントの炭素を含む合金の場合,高温から急冷する事によって硬度と靱性が得られます。私たちは合金を急冷する事によりなぜ特性が変わるかについて,結晶の集合体を観察する事で理解しようとしています。今回は,加熱したときの条件と現れる結晶の組み合わさり方について,走査型電子顕微鏡と電子回折図形解析法を使って解析した結果を報告します。

 
5  井戸 翔太

指導教員

 北川 裕之
所属  島根大学 総合理工学研究科 物理・材料科学コース
分野  材料系
発表テーマ  新規通電焼結法による熱電材料の組織・結晶配向制御
概要

 通電焼結法は通電加熱を特徴とする加圧焼結法の一種である。低温・短時間で高密度焼結体の製造が可能であり,粉末冶金の分野で急速に広がっている技術である。通電焼結法で得られる材料は,一般に結晶方位がランダムな多結晶体であるが,異方的物性を有する材料においては,組織・結晶配向制御が必要になる場合がある。我々は,通電焼結中に印加する圧力を周期的とすることによって,結晶配向を促す手法を検討している。発表では,本手法をBi2Te3系熱電変換材料に適用した研究結果について紹介する。

 
6  河野 祐輝

指導教員

 李 樹庭
所属  島根大学 総合理工学部 機械・電気電子工学科
分野  機械工学系
発表テーマ  歯車装置の伝達誤差の理論解析及び実験に関する研究
概要

 歯車装置は様々な機械に使用されているが,歯車の伝達誤差は機械装置の振動・騒音源となっており,伝達誤差の理論解析方法の確立が求められている。本研究では,歯車の加工誤差の3つの成分(歯形誤差,ピッチ誤差,歯筋誤差)を用いて伝達誤差の理論解析を行うとともに,測定装置を設計・試作し,伝達誤差を実測する。実験結果と解析結果の比較により,提案した伝達誤差の理論解析方法の妥当性を検証しながら,その理論解析方法を確立することを目指す。

 
7  引野 愛子

指導教員

 清家 泰
所属  島根大学 総合理工学研究科 物質化学コース
分野  環境系
発表テーマ  高濃度酸素供給装置を用いる布部ダムの窒素浄化
概要

 島根県東部に位置する布部ダムでは,近年,アオコの発生が問題となっている。アオコ発生抑制対策の一環として,松江土建叶サ高濃度酸素水供給装置(WEPシステム)を導入し,内部負荷削減に関する実証実験を2012年から行っている。布部ダムの最深部に高濃度酸素水を供給した結果,湖底からのリンの溶出は容易に削減できたものの,窒素濃度は上昇する一方だった。その原因を突き止め,WEPシステムの稼動方法を変えたところ,窒素濃度の削減に成功した。現在,自動化を目指し検討中である。

 
8  松浦 有紀

指導教員

 増永 二之
所属  島根大学 生物資源科学研究科 環境資源科学専攻
分野  環境系
発表テーマ  木質チップを用いた省エネ型有機質汚泥処理技術の開発
概要

 産業廃棄物の約44%を占める下水汚泥をはじめとした各種有機質汚泥の処理コストは各事業所の大きな課題である。有機質汚泥の処理技術の一つに,木質チップを充填した槽に汚泥を投入・撹拌し分解することで減量化する方法(株式会社アクアプロジェクト開発)がある。この技術は,週1-2度の汚泥ポンプ輸送と表層の撹拌以外にエネルギーを使わない。鳥取県日野町の集落排水施設や宮城県石巻市水産加工排水処理施設での使用実績があるが,過去の経験的な運転管理方法で行っており装置改良の余地が大きい。 

 そこで,汚泥処理に関わる基本的ないくつかの装置(運転)条件と汚泥分解率の変化を調べ,装置と運転条件の改善方法を検討した。研究の結果,水分含有量の変化や撹拌の有無による分解率への影響を定量的に評価でき,改善方法を提案することが出来た。

 
9  宮田 彩里

指導教員

 西川 彰男
所属  島根大学 生物資源科学研究科 生物生命科学専攻
分野  生物系
発表テーマ  ツメガエル(Xenopus laevis)肢芽の異所移植による新生肢芽形成の分子メカニズム
概要

 ツメガエル幼生は肢芽形成初期で肢芽全体を異所に移植すると,移植肢芽基部とホスト領域との境界から新肢芽が生じる。新肢芽形成メカニズム解明のために,分子の発現に注目した実験を行っている。 

結果と考察

@抗体染色により,新生肢には神経は見られないがグリア細胞の存在は確認された。

Ain situ hybridization解析の結果,線維芽細胞増殖因子(fgf8fgf10)および極性化活性化因子(ソニックヘッジホッグ,shh)の発現が認められ,これら因子の新生肢芽形成への関与が示唆された。

BRA下で3日間飼育すると,尾再生抑制・肢指欠損・関節異常・過剰(重複)肢形成等の影響が見られた。このことから,RAシグナルに関連した因子の新生肢芽への関与が示唆された。

 
10  橋本 尚 ・ 本多 学

指導教員

 板村 裕之
所属  島根大学 生物資源科学研究科 
分野  農業生産系
発表テーマ  カキ果実における軟化・褐変現象に関する基礎的研究
概要

 収穫後ドライアイス処理したカキ‘西条’果実は,軟化・褐変するため貯蔵が困難であることが問題となっている。

 私たちの研究室では,細胞壁分解酵素や褐変化酵素を調べることで,果実の軟化および褐変がエチレンに誘導されることを明らかにした。特に褐変現象においては,液胞内のポリフェノールと葉緑体内のポリフェノール酸化酵素が膜の損傷により漏出し結合することにより生じることが示唆された。

 
11  高羽 優 ・ 三木 志帆

指導教員

 江角 智也
所属  島根大学 生物資源科学研究科 
分野  農業生産系
発表テーマ  ブドウの機能性成分に関する研究〜機能性成分高含有品種の開発と成分蓄積機構の解明〜
概要

 最近の消費者のニーズとして,高機能性食品が求められている。ブドウに含まれる機能性成分として,アントシアニンやレスベラトロールが挙げられる。

 そこで,多様なブドウ品種を用いて果皮のレスベラトロール含量を測定したところ,品種によって差が見られた。その中から,レスベラトロール高含有の品種と食味が良好な品種を親として交配試験を行った。得られた実生個体から,高含有の系統選抜に取り組んでいる。

 一方で,生育環境が制御可能なブドウ培養細胞をモデルとし,外的環境の違いによる機能性成分の蓄積機構を明らかにする研究にも取り組んでいる。得た結果を,アントシアニンやレスベラトロールを多く含むブドウ果実の生産技術に結び付けることを目指している。

 ブドウの機能性成分に関する基礎的研究を進めることで,高い機能性をもつブドウの育種や栽培技術の開発・確立が期待される。

 
12  松近 拓哉

指導教員

 青代 敏之
所属  松江工業高等専門学校 専攻科 電子情報システム工学専攻
分野  医療機器系
発表テーマ  複合低エネルギ生体組織接合における生体温度の推定
概要

 現在までに超音波・電気メスの使用により,患部の組織損傷を起こすことが報告されている。そこで我々は,熱・圧力の複合低エネルギによる生体組織接合デバイスの研究開発を行っている。これまでに,熱電対を用いた生体組織の温度制御において,熱電対に由来する問題が生じている。これを解決するために,生体組織とヒータの熱伝導解析を行った。ヒータ温度から生体組織における接合部温度が推定可能であることが分かった。

 
13  坂上 拓磨

指導教員

 土師 貴史
所属  松江工業高等専門学校 専攻科 生産建設システム工学専攻
分野  機械工学系
発表テーマ  受動的走行能力を高めた柔軟全周囲クローラ
概要

 近年,災害現場などの人の進入が困難な環境での調査活動において,ロボット技術に期待が高まっている。このような場所は不整地であることが多く,高い走破性が求められる。本研究室では単体の履帯を3方向に湾曲させ,旋回や障害物の受動的な乗り越えを可能とした柔軟全周囲クローラを用いて研究を行っている。本研究に用いられる試作機RT06は走行性能における信頼性が不十分であったため,問題を解決し信頼性を高めた新たな試作機を開発した。

 

A

 大庭・森戸研究室 (大庭 卓也 教授,森戸 茂一 准教授)
紹介者  藤原 純也
所属  島根大学 総合理工学研究科 物理・材料科学コース
分野  材料系
発表テーマ  島根大学総合理工学部大庭・森戸研究室の紹介
概要

 私たちの研究室は,日常生活において最もかかわりのある物質のひとつである鉄について研究しています。一口に鉄と言っても混ぜる元素一つで性質が大きく変化し,加熱や冷却などを繰り返すことで強さが大きく変化します。この理由についてはよく分かっていないところがたくさんあります。私たちは,様々な種類の鉄に対して走査型電子顕微鏡やX線回折装置を使って結晶の構造や組み合わせ方を観察し,鉄の機能の由来を明らかにし,それを元に鉄の特性向上を目指しています。

HP

 http://www.phys.shimane-u.ac.jp/ohba_lab/

B

 辻研究室 (辻 剛志 准教授)
紹介者  安達 泰精
所属  島根大学 総合理工学部 物質科学科(化学)
分野  化学系
発表テーマ  レーザーアブレーションによるナノ粒子の作製,粒径制御
概要

 レーザーアブレーションは,高強度のレーザー光を物体に照射したときに起きる物質の蒸発現象であり,様々な材料の微細加工,薄膜や微粒子の作製に広く用いられています。
 本発表では特に,水などの液体中に設置した物体に対してレーザーアブレーションを行い,コロイド状のナノ粒子を作製する方法や,作製したナノ粒子に対してさらにレーザー光やキセノンランプの光を照射することによって,ナノ粒子の大きさや形を制御する方法を紹介します。

HP

 http://www.ipc.shimane-u.ac.jp/physchem-ii/

C

 鈴木研究室 (鈴木 美成 准教授)
紹介者  鈴木 美成
所属  島根大学 生物資源科学部 地域環境科学科
分野  環境系
発表テーマ  メタロミクスをベースにした島根県内の環境評価
概要

 メタロミクス(metallomics)は,金属元素(半金属元素も含む)の総体をメタローム(metal + ~ome)と定義し,メタロームの網羅的分析に立脚した研究分野であり,様々なオミクス研究の中でも比較的新しい学問分野である。
 発表会では,当研究室で行っている大気中粒子状物質に含まれる金属元素のリアルタイム計測と,県内の温泉に含まれる60元素以上を網羅的に分析した後にデータマイニングの手法を適用した解析結果について紹介する。

HP

 http://www.ipc.shimane-u.ac.jp/bio-env-chem/index.html

C

 板村・江角研究室 (板村 裕之 教授,江角 智也 准教授)
紹介者  多田 康浩
所属  島根大学 生物資源科学部 農林生産学科
分野  農業生産系
発表テーマ  園芸作物の花芽〜果実に着目した“生理機能”と“機能性成分”の研究
概要

 植物機能学分野では,カキ約40品種,ブドウ約50品種を管理し,また,イチジク,アズキ,本庄総合農場のサクラ約130品種なども研究材料として,果実成熟のメカニズム解明,園芸作物の花芽から果実になるまでの植物生理機能の解明,機能性成分の分析,遺伝子機能の解明などを行っています。また,果樹を中心にゲノム情報や組織培養を利用し,新品種の開発なども試みています。HPLC,GC,分光光度計,各種遺伝子分析機器などを用いて,植物組織学,分子生物学,植物生理学など様々な手法や観点から,研究を行っています。

HP

 http://www.ipc.shimane-u.ac.jp/pomology/index.htm

 

   研究室見学
 総合理工学部コース

研究室

教員

概要

物質構造講座

大庭 卓也
森戸 茂一

電子顕微鏡およびX線回折装置を用いた材料組織局所結晶方位解析システムの見学を行います。
高機能触媒研究室

小俣 光司

高圧反応用触媒(環境浄化触媒, 有機資源変換触媒)の活性試験ならびに分析を行っている部屋の見学を行います。
光応用計測研究室

横田 正幸

ディジタルホログラフィによる工業計測システムの研究設備の見学を行います。

 生物資源科学部コース

研究室

教員

概要

生物環境化学研究室

鈴木 美成

トリプル四重極型誘導結合プラズマ質量分析装置を用いて,周期表上のほぼすべての元素を網羅的に解析を行っている実験室を見学します。最近はPM2.5 のリアルタイム分析に力を入れており,新聞でも度々紹介されています。
植物機能学研究室

板村 裕之
江角 智也

研究で用いる分析機器や廊下に掲示しているポスターをみていただくことで研究活動についての紹介をします。
植物病理学研究室

上野 誠

病害虫防除関連の研究を行っている実験室(病原菌や昆虫を培養している部屋)や昆虫標本室を紹介します。
 
 お問合せ先

 島根大学産学連携センター(担当:北村)

 Tel:0852-60-2290 E-mail:crcenter@ipc.shimane-u.ac.jp