食品分野研究シーズ発表会in浜田
  Food-related Research&Seeds Presentation Meetings in Hamada

島根大学産学連携センター  


 平成23年3月11日(金)に,浜田合同庁舎において「食品分野研究シーズ発表会in浜田」が開催されました。

 本発表会は,島根県,財団法人しまね産業振興財団,島根大学,以上の3機関による主催事業として開催され,食品分野における最新の研究成果,研究シーズが発表されました。

 研究シーズ発表は,島根大学に加えて,島根県立大学,広島大学,水産大学校からもご協力いただき,合計6件の発表となりました。

 島根大学からのシーズ発表は,生物資源科学部2件,医学部1件の計3件で,まず生物資源科学部の板村教授が,「西条柿の機能性と産業応用の実例と可能性」をテーマに,地元浜田市の特産物でもある西条柿の持つ様々な効果や機能性について発表されました。続いて,生物資源科学部の戒能准教授が,「微生物を用いた機能性物質の生産と応用の可能性」をテーマに,コエンザイムQ10に関する基礎的研究から得られた知見とその産業応用性について発表されました。そして,医学部の塩飽教授が,「モロヘイヤ葉の肥満と糖尿病への予防効果」をテーマに,肥満防止や糖・脂質代謝の改善に役立つと考えられるモロヘイヤ葉の機能性について発表されるとともに,その他の糖尿病予防食品として,地元の出雲そばやワサビについても肥満予防効果があることも示されました。

 当日は,地元浜田市や石見地区の食品加工業や水産業の企業の方々,周辺自治体や金融機関の関係者の方々にも多数お集まりいただきました。食品分野の研究に対する期待は大きく,発表会は参加者90名と大変盛況でした。

 研究シーズ発表に合わせて,浜田市水産課から「水産ブランド『どんちっち』の取り組み」について,生物資源科学部の野中教授から「島根大学における地域再生人材創出拠点の形成手法」についての発表も行われました。また,しまね産業振興財団 技術支援課の清水氏からは,食品産業分野に従事されている方々にご活用いただけるような支援メニューについてもお話いただきました。

 食品分野に特化した研究シーズ発表会の開催は,県内では初めての取り組みであり,開催にあたり,ご協力をいただいた関係者の皆様,貴重な研究成果のご発表をいただいた島根県立大学短期大学部の赤浦准教授,広島大学大学院生物圏科学研究科の加藤教授,水産大学校食品科学科長の芝教授にも改めて御礼申し上げます。

 産学連携センターでは,地元のニーズを踏まえながら,今回のような分野別の研究シーズ発表会を開催していく予定です。

 各研究シーズについては,それぞれの発表機関宛に直接お問い合わせください。


日時・会場

  平成23年 3月11日(金)
  発表会 : 浜田合同庁舎 2階 大会議室(浜田市片庭町254)
  懇親会 : 割烹鈴蘭別館(浜田市港町186−5)

主催

  国立大学法人島根大学,島根県,財団法人しまね産業振興財団

共催

  浜田市

後援

  島根県商工会議所連合会,島根県商工会連合会,島根県中小企業団体中央会,
  島根県食品工業研究会,株式会社山陰合同銀行,株式会社島根銀行,日本海信用金庫

プログラム

開会挨拶 (14:00-14:10)

   島根大学 理事(学術・国際担当)副学長 柴田 均

発表シーズ@「西条ガキ熟柿の生産と熟柿ピューレの利用」 (14:10-14:30)

   島根県立大学 短期大学部 健康栄養学科 准教授 赤浦 和之

発表概要:

 島根県特産の西条ガキは,熟柿としても品質優秀な渋ガキである。収穫後低温貯蔵した西条ガキ(渋)にエチレン処理を行うと,最短6日で品質の揃った熟柿が斉一に得られる。また,熟柿は低温貯蔵すると2週間以上にもわたって適当な軟らかさを保つ。収穫果実(渋)の低温貯蔵と熟柿の低温貯蔵を組み合わせると,翌年の1月中旬まで熟柿の供給が可能となる。熟柿はピューレに加工することにより,様々な調理や食品への添加などに利用できる。

発表シーズA「西条柿の機能性と産業応用の実例と可能性」 (14:30-14:50)

   島根大学 生物資源科学部 農業生産学科 教授 板村裕之

発表概要:

 西条柿は渋み物質であるカキタンニンを多く含みます。このカキタンニンはフラボノイド化合物であり,タンパクやセルロースなどの高分子物質や,アルコール,アセトアルデヒドなどの揮発性物質,鉄などの金属と結合しやすい性質を持っています。そのことが,漁網の強化,清酒の澱落とし,抗ウイルス性,抗菌性,消臭効果,悪酔い防止効果,防さび効果などの機能性を付与しています。本発表ではそれらの実例と産業応用の可能性について紹介しました。

発表シーズB「微生物を用いた機能性物質の生産と応用の可能性」 (14:50-15:10)

   島根大学 生物資源科学部 生命工学科 准教授 戒能智宏

発表概要:

 古来より微生物を用いた発酵生産は食品製造のみならず,近年では医薬,化学品の生産にも用いられ産業上非常に重要である。特に,物質代謝経路の解明と改良技術の進展を応用に活かしていくことが期待される。本発表では,微生物を用いた物質生産に必要な基礎的知見と事例とともに,抗酸化機能を持つコエンザイムQ10を合成する遺伝子と代謝経路の解明という基礎的研究から得た知見とその産業利用の可能性についてご紹介しました。

発表シーズC「モロヘイヤ葉の肥満と糖尿病への予防効果」 (15:10-15:30)

   島根大学 医学部 環境予防医学所 教授 塩飽邦憲

発表概要:

 肥満には,酸化ストレスが関与し,高血糖,高脂血症,高血圧を伴うことが多い。
 抗酸化作用をもつポリフェノールを多く含むモロヘイヤ葉粉末を,LDL受容体欠損マウスに投与した。モロヘイヤ葉粉末投与群では体重,肝および脂肪組織重量,血糖,中性脂肪および遊離脂肪酸の低下,HDL-コレステロールの上昇,肝中性脂肪量の低下,肝臓の代謝(β酸化)促進と酸化ストレス抑制に関連する遺伝子の発現抑制が観察された。モロヘイヤ葉粉末は,肥満防止および糖・脂質代謝の改善に役立つと考えられる。

浜田市における水産業振興の取り組み (15:40-15:55)

   浜田市 産業経済部 水産課 主任主事 小寺良昌

島根大学における地域再生人材創出拠点の形成手法 (15:55-16:15)

   島根大学 生物資源科学部 地域開発科学科 教授 野中資博

発表概要:

 島根大学生物資源科学研究科では科学技術振興調整費の支援を受け,地域産業人育成コース「環境管理修復・地域資源活用人材養成ユニット」において地域再生に資する人材育成を行っています。本事業では自然再生と水環境の環境修復を行いながら,そこから生じる汚泥等を資源とし,それらを農業生産に利活用するといった,環境保全と産業育成が共生する持続可能な資源循環型社会の構築を目指した人材養成事業を行っています。

しまね産業振興財団の支援施策紹介 (16:15-16:30)

   しまね産業振興財団 技術支援課 清水陽介

発表概要:

 財団法人しまね産業振興財団は,県内企業の競争力強化を通じて県勢の拡大を目指す総合的産業支援機関です。当財団では,経営・金融・販売・技術・知的財産・貿易などの専門ノウハウを活用し,様々な分野において県内企業や創業者の方々をサポートしています。本発表では,特に食品産業分野に従事していらっしゃる皆様にご活用して頂ける支援メニューをご紹介致しました。

発表シーズD「腸のアンチエイジング食品の開発」 (16:40-17:00)

   広島大学大学院 生物圏科学研究科 教授 加藤範久

発表概要:

 腸内細菌叢や胆汁酸など大腸内環境が体内の健康(肥満や糖尿病など)に影響する重要な因子であることが近年の研究で明らかになってきました。本発表では,腸のアンチエイジングを目的とした我々の機能性食品に関する研究について紹介しました。具体的には,ポリフェノールなどの腸内環境を改善する新規機能性の解明やごぼう茶やライスプロファイバーなどのアンチエイジングを目的とした食品(素材)の開発について紹介しました。

発表シーズE「水産大学校の食品開発のマーケットイン的取り組み」 (17:00-17:20)

   水産大学校 食品科学科長 教授 芝 恒男

発表概要:

 大学のシーズを用いたプロダクトアウトの産学連携が盛んだが,マーケットリサーチが不十分な場合が多く事業化までの成功例は少ない。40社以上との共同研究を行っている水産大学校食品科学のプロダクトアウトの苦労例や,マーケットを事前にリサーチしたうえでの産学連携の成功例(EPA入り蒲鉾やアルコールブライン凍結技術開発)を紹介した。

閉会挨拶 (17:20-17:25)

   島根県西部県民センター 所長 楫野 弘和

懇親会 (17:45-19:15)

お問合せ先

 島根大学の発表シーズについて

国立大学法人島根大学 産学連携センター
連携企画推進部門 講師・産学連携マネージャー 丹生晃隆(たんしょうてるたか)
〒690-0816 島根県松江市北陵町2番地
TEL:0852-60-2290 E-mail:crcenter@ipc.shimane-u.ac.jp

 島根県立大学の発表シーズについて

公立大学法人島根県立大学
短期大学部 松江キャンパス 健康栄養学科 准教授 赤浦和之
〒690-8518 島根県松江市浜乃木7-24-2
TEL:0852-20-0239 E-mail:k-akaura@matsue.u-shimane.ac.jp

 広島大学の発表シーズについて

国立大学法人広島大学 産学・地域連携センター
国際・産学連携部門 NEDOフェロー 鈴藤正史
〒739-0046 広島県東広島市鏡山3-10-31
TEL:082-421-3631 E-mail:techrd@hiroshima-u.ac.jp

 水産大学校の発表シーズについて

独立行政法人水産大学校
食品科学科長 芝 恒男
〒759-6595 山口県下関市永田本町2-7-1
TEL:0832-86-5111 E-mail:tsuneo@fish-u.ac.jp

 食品分野研究シーズ発表会in浜田について

財団法人しまね産業振興財団
技術支援課 清水陽介
〒690-0816 島根県松江市北陵町1番地
TEL:0852-60-5112 E-mail:sat@joho-shimane.or.jp