島根大学 地域共同研究センター
シンポジウムの報告



題 目 第6回島根大学・鳥取大学合同シンポジウム

「山陰地方の現状と課題」

循環型社会の確立を目指して

日 時
場 所
  平成12年 1月29日(土) 13:00〜17:00
  島根大学総合理工学部3号館 2階 多目的ホール
プログラム ●開会の辞
  ・「循環型社会・循環型技術の序説」
            島根大学地域共同研究センター長 片山裕之
●第1部講演会/「自然の循環」
  ・「乾燥地の灌漑農業と砂漠化」
            鳥取大学乾燥地研究センター教授 矢野友久
  ・「循環型産業としての内水面漁業」
            島根県内水面水産試験場長 中村幹雄
●第2部講演会/「自然エネルギーの利用」
  ・「太陽エネルギーによって航行する堀川遊覧船」
            松江工業高等専門学校助教授 別府俊幸
●第3部講演会/「人工循環」
  ・「化学プロセス循環化のキーテクノロジー:固体触媒化学」
            鳥取大学工学部助教授 片田直伸
  ・「循環型社会は理想郷か?」
            島根大学総合理工学部教授 古津年章
●閉会の辞
            鳥取大学地域共同研究センター長 副井 裕



【当日の模様】

 当日は,島根大学,鳥取大学をはじめ,松江高専や企業の方々など,約70名が参加され盛況でした.



 島根大学地域共同研究センター長の片山先生は,「循環型社会・循環型技術の序説」と題して,本シンポジウムで「循環型社会の確立を目指して」というテーマを選択した背景や山陰地方の現状について講演された.講演の中で,大きな循環として自然の循環があり,この中で,人工の循環を考えなければならず,今後様々な観点から取り組んでいく必要があると強調された.



 鳥取大学乾燥地研究センターの矢野先生は,「乾燥地の灌漑農業と砂漠化」と題して,乾燥地の区分,灌漑農業による塩害などの実状と問題点等について,現地での写真などを交えて講演された.砂漠化の防止について,高分子吸収材を利用した点滴灌漑法や灌漑によって生じる高濃度排水の利用,降水の利用など,様々な新技術を紹介された.



 島根県内水面水産試験場長の中村先生は,「循環型産業としての内水面漁業」と題して,良好な環境を維持して漁獲量を制御することにより持続可能な漁業ができると言うこと前提に,内水面である宍道湖におけるシジミ業はこれに適合した循環的産業の代表であることを強調された.また,宍道湖や中海の問題点として,富養化による貧酸素域の拡がりを指摘され,この縮小・解消により水産資源の増大も期待できる.さらに,宍道湖・中海水産振興策の一つとして,アオノリの養殖についても触れられた.



 松江工業高等専門学校の別府先生は,「太陽エネルギーによって航行する堀川遊覧船」と題して,堀川遊覧船に太陽電池と蓄電池を積み込んで,電機モーターで航行する遊覧船を試作し,実際に航行実験された結果を報告された.現在のシステムでは舟の屋根に積んだ太陽電池で発電される電力で,晴れた日であれば,6周程度の運行が可能である.今後も実際に堀川で実験を行っていく予定と報告された.



 鳥取大学工学部の片田先生は,「化学プロセス循環化のキーテクノロジー:固体触媒化学」と題して,化学製品を製造するプロセスの中での循環とその中での固体触媒の重要性について報告された.現在の石油化学製品の製造プロセスの中では,製造プロセス自体で環境負荷につながる物質を廃棄しており,これをなくし,プロセス自体を環境調和型,循環型にするために,固体触媒が必要であると強調された.また,環境負荷を考える場合は,製品だけでなくそれを製造するプロセスについても考慮する必要があると指摘された.



 島根大学総合理工学部の古津先生は,「循環型社会は理想郷か?」と題して講演され,現状,経済,自治体の動き,思想など様々な角度から循環型社会を確立にたいする問題提起をされた.その上で,20世紀型の「しがらみ」が少なく,自然豊かで,文化的伝統のある山陰地域で,循環型社会にむけて実験を行っていく意義があるとされた.